写真:663highland/CC BY 2.5(Wikimedia Commons)
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岩手県遠野市は、カッパや座敷わらしの伝承が今もくらしの中に息づく町です。この記事では、町おこしの背景から観光スポットの歩き方・アクセス・宿選びまで、旅に役立つ情報を一通り紹介します。
『遠野物語』は、柳田国男が明治43年(1910年)に発表した、岩手県遠野地方に伝わる逸話・伝承を記した説話集です。話者は遠野出身の作家・民俗学者の佐々木喜善で、遠野郷に伝わる話をそのままに近い形で収録しています。
当初は自費出版で部数も350部にすぎず、評判は思わしくありませんでしたが、民間伝承をもとに歴史を研究する民俗学が確立すると名著といわれるようになりました。今日では英訳・中国語訳・韓国語訳なども刊行されており、遠野の名は国内外に広く知られています。
内容は天狗、河童、座敷童子など妖怪にまつわるものから、山人、マヨヒガ、神隠し、臨死体験、あるいは神とそれを奉る行事・風習に関するものなど多岐にわたります。なかでもカッパ(河童)の話は読者の関心を集めやすく、遠野市の観光の柱となっていきました。
カッパを見たという故阿部与一さんとともに、カッパがいる淵であるということで全国的に有名になったカッパ淵は、遠野市内で最も有名な観光地となっています。こうした伝承と地名がセットで語られることで、「遠野=カッパの里」というイメージが定着していきました。
さらに遠野市は、カッパ伝説を観光に活かすユニークな取り組みも続けています。「カッパ捕獲許可証」はふるさと納税の返礼品にもなっており、遠野市観光協会のお土産品人気No.1商品です。カッパを捕まえて観光協会に届けると賞金1,000万円というユーモアあふれる制度も、この町ならではの発想です。
民話とカッパだけでなく、遠野にはもうひとつの顔があります。日本一のホップ生産地である遠野では、近年、ビールを軸にした町おこしも盛んです。1963年からホップ栽培を続けており、2015年からは「ビールの里プロジェクト」をスタートさせ、生産者・企業・地域住民・行政が連携して地域活性化に取り組んでいます。夏にカッパ淵へ向かう途中、緑のホップ畑が広がる風景も遠野らしい景色のひとつです。
遠野の観光地は市内に点在しているため、どこから回るかを先に決めておくと動きやすくなります。主要スポット(カッパ淵・伝承園・とおの物語の館・遠野市立博物館)を回るなら5〜8時間が目安です。1泊2日あれば、市街と郊外をゆっくりと巡ることができます。
まず遠野駅周辺で立ち寄りたいのが「とおの物語の館」です。JR遠野駅から徒歩7分の場所にあり、開館時間は9:00〜17:00(入館受付16:30まで)、年中無休(メンテナンスのため臨時休館あり)です。遠野の民話や柳田国男の旧居など、遠野物語の世界観を総合的に紹介しており、観光の入口として最適な施設です。
駅のすぐそばには、観光案内所とレンタサイクルを兼ねた「旅の蔵 遠野」があります。JR遠野駅から約40m、徒歩で約1分の場所にある観光の拠点で、観光案内のほかレンタサイクルの受付も行っています。カッパ捕獲許可証の購入もここで可能です。
遠野伝承園は、遠野に伝わる民話の世界を体感できる施設です。国の重要文化財の曲り家「旧菊池家住宅」や千体のオシラサマを祀る「御蚕神(オシラ)堂」のほか、『遠野物語』の話者・佐々木喜善に関する資料を展示しています。
料金は一般450円・高校生以下350円(未就学児無料)で、営業時間は3月〜11月が9時〜17時(入園受付は16時30分まで)です。アクセスはJR遠野駅から岩手県交通バス西内行き、または恩徳行きで約22分、伝承園前バス停下車すぐ。車なら釜石道遠野ICから国道283号経由で約8km・15分です。最新の料金・休業日は公式サイトでご確認ください。
伝承園でカッパ捕獲許可証を入手したら、徒歩でカッパ淵へ向かいましょう。
常堅寺は延徳2年(1490年)に開山した曹洞宗の由緒ある古寺で、境内には頭部に円形状のくぼみがあり、そこに水が溜まるとカッパの皿のように見えることから「カッパ狛犬」と呼ばれる狛犬があります。
その裏手に「カッパ淵」と呼ばれる小川が流れています。澄んだ水がさらさらと流れるカッパ淵は、うっそうとした茂みに覆われ、今にもカッパが現れそうな雰囲気です。岸辺には小さな祠があり、カッパを祀っています。
伝承園でカッパ捕獲許可証を購入し、キュウリを餌にカッパ釣り体験をしてみるのも遠野ならではの楽しみ方です。カッパ淵は見学自由・入場無料です。伝承園から徒歩約5分で到着します。
また、遠野市はケーブルテレビ局が監視カメラでカッパ淵を24時間撮影しているほど、本気でカッパを探し続けています。こうした遊び心も、遠野の観光をユニークにしている要素のひとつです。
遠野の返礼品でおなじみのカッパ捕獲許可証をはじめ、旅の前にお取り寄せで遠野の味を試しておくのもよいでしょう。
遠野ふるさと村は、遠野の昔の農村集落を再現した観光施設です。手入れが行き届いた里山の自然の中に、馬と人が共に暮らしていた南部曲り家を移築・保存し、昭和初期の農村の風景をイメージして整備されています。
料金は一般750円・高校生以下400円で、営業時間は3月〜10月が9時〜17時(入村受付は16時まで)、11月〜2月が9時〜16時(入村受付は15時まで)です。アクセスは遠野駅前バス停から岩手県交通のバスで25分、遠野ふるさと村バス停下車(駅から村まで約12km)です。年末年始と冬期の一部は休業となります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
岩手県内の民話や伝説に関心があれば、同じ岩手を舞台に独自の町おこしを続けるホッケーと彫刻で知られる岩手郡岩手町の町おこしも読んでみてください。
遠野市内の観光スポットは車がないと回りにくいと思われがちですが、レンタサイクルという選択肢もあります。遠野駅からはあまり高低差のない5キロほどの道のりなので、レンタサイクルで景色を楽しみながらカッパ淵へ向かうことができます。
レンタサイクルは「旅の蔵 遠野(遠野市観光協会)」で受け付けています。JR遠野駅から徒歩約1分と便利な場所にあります。電動自転車の有無や料金は時期によって変わることがあるため、事前に観光協会への確認をおすすめします。
バスを利用する場合は、JR遠野駅から岩手県交通バス土淵線で約25分、足洗川バス停下車(1日5便程度、時期により変動)でカッパ淵周辺にアクセスできます。本数が少ないため、時刻表は事前に確認しておきましょう。
東京からはJR東北新幹線で新花巻駅まで約3時間、新花巻駅から釜石線に乗り約1時間でJR遠野駅に到着します。乗り換えは1回で済むため、東北新幹線沿線からのアクセスは思いのほかシンプルです。
仙台からは東北新幹線で新花巻駅まで約1時間、そこからJR釜石線で遠野駅まで約60分です。東北各地からのアクセスにも対応しています。
車の場合は、釜石道遠野ICから国道283号経由で伝承園まで約8km・15分と、高速道路からのアクセスも良好です。市内の観光施設には無料駐車場が整備されているところが多く、荷物が多い旅や家族での旅行には車が便利です。
遠野市内および周辺には、温泉付きの宿や市街地のビジネスタイプのホテルなど、旅のスタイルに合わせた宿が揃っています。駅周辺に泊まればレンタサイクルでの観光が便利で、郊外の温泉宿ならゆったりと夜を過ごせます。
東北の旅では花巻温泉郷などを組み合わせた1泊2日の行程も人気です。隣県の町おこしに興味があれば、青森ねぶた祭の宿選びの記事も参考になります。
遠野は四季を通じて観光できますが、季節によって見どころが変わります。
東北の夏祭りと組み合わせて旅程を組む方には、青森・田舎館村の田んぼアートもあわせて参考にしてみてください。
遠野市は、明治43年(1910年)に出版された『遠野物語』を土台に、カッパ伝説や民話を観光資源として育ててきた町です。カッパ淵・常堅寺・伝承園・遠野ふるさと村といったスポットをめぐれば、日本の原風景と伝承文化を肌で感じることができます。東京から新幹線と釜石線を乗り継いで約4時間とアクセスも現実的で、1泊2日の旅にちょうどよい規模感の町です。カッパ捕獲許可証を手に、ゆっくりと歩いてみてください。
アイキャッチ写真:663highland/CC BY 2.5(Wikimedia Commons)
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